日本社会福祉学会関東部会

社会とのつながりが途切れるプロセス―高次脳機能障害者を対象とした複線経路・等至性モデル(TEM)分析を通して―


 志水 田鶴子 (東洋大学大学院福祉社会デザイン研究科社会福祉学専攻)


 抄録

 高次脳機能障害者が抱える課題の一つにアウェアネスがある.アウェアネスが障害されると,自身の障害に対する正しい理解に困難を抱える.本研究では複線経路・等至性モデル(TEM)を用い,彼らの経験の実態と,社会とのつながりが途切れるきっかけを明らかにした.①第1期では退院によって,②第2期は社会復帰により,アウェアネスの顕在化が進むこと,③第3期では退職等のきっかけで社会とのつながりが途切れることが明らかになった.そして,何度も社会とのつながりが途切れるきっかけがあったこともわかった。逆に第4期では就労継続支援B型事業につながり,仲間との交流や記憶の外的補助手段を獲得するなど,今の自分と環境との折り合いをつけ,もがきつつも自分らしく生きることへと向かうことが明らかとなった.唯一通院は継続しており,医療ソーシャルワーカーには,彼らのアウェアネスを加味した継続的な支援が求められる.

Key Words:高次脳機能障害,アウェアネス,つながり,複線経路・等至性モデル

社会福祉学評論(21):117-127、2021


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